ニッケルチタンファイルと根管形成

根管形成とは?

根管治療(根の治療)は歯の中の神経や汚れをしっかり取ってお掃除するが目的で、もともとある歯の中の神経の入っている空洞を広げる必要があります。なぜかというと、しっかり歯の中の汚れを取るには最終的には様々な液体を使用し、根の先からよく洗浄する必要があるからです。もともとある歯の中の空洞では狭すぎて液を流し込めずしっかり洗浄できないので、液を流し込むために歯の中の空洞を広げる(狭いトンネルから広いトンネルへ)必要があるのです。空洞は歯の内部を削って広げるのですがその時に、歯の空洞の中の汚れ(感染源)も一緒に除去します。それを根管形成と言います。

根管形成の行うこと手順は大きく2つあります。

一つ目は、歯の根の先まで穴(トンネル)を穿通(貫通)させることです。根の先までしっかりトンネルを貫通させなければ、洗浄する液体は根の先までしっかり流れ込みません。歯によっては、中の空洞がものすごく細かったり、形が複雑だったりします。根管形成はほとんどが根の穿通作業と言っても過言ではありません。閉じたトンネルを穿通できるまで、いかに正確に、いかに丁寧に、いかにスピィーディーにできるかが歯科医師の腕の見せ所だと思います。

二つ目は、穿通(貫通)させた、トンネルの幅を広げ(太くする)、さらに歯の中の汚れ(感染源)を除去することです。このことで消毒液が流せます。クオリティ高く、そしてスピーディーにこの作業を行うにはニッケルチタンファイルは必須です!

ファイルとは?

歯の根の内部の神経の残骸や感染物質を取り除くための針の形をした道具です。大きく分けると、手用ファイル、ニッケルチタンファイルがあります。

手用ファイル

手用ファイル

歯の根の中のトンネル穿通(貫通)作業は100%の先生が手用ファイルを使用します。なぜかというと、手用ファイルはニッケルチタンファイルよりも、より細い種類が多く(存在)発売されているからです。またステンレス製の手用ファイルの方が穿通(貫通)させるには向いている性質をしているからです。

手用ファイルは古来から存在する器具です。手でつかんで使用します。ステンレス製で硬い金属を使用しています。

ニッケルチタンファイル

ニッケルチタンファイル

手用ファイルは歯の根まで穿通させる作業には向いていますが、根の中のトンネルを広げることは困難です。クオリティ高い根管治療を行うのであれば手用ファイルは使用しません。以前は、手用ファイルのみですべての根管形成することを大学で教育をうけました。しかし根の先が曲がっている症例でステンレス製の硬い手用ファイルのみで根管形成してしまうと、根の先に「レッジ」といって根管のひっかかり(トンネルに段差ができてしまい)、トンネルを封鎖してしまう現象が起こってしまいます。トンネルが一度封鎖してしまったら再び開けるのは非常に困難です。そうならないために、根の中のトンネルを広げる作業はしなやかなファイルを使用します。

 

トンネルを広げる時に二ッケルチタンファイルを使用します。ニッケルチタン製の器具です。非常に柔らかく弾性性のある器具です。

電動モーターで機械を回転させて使用します。機械なので、毎回一定の根管形成が可能です。根尖部の形成は手用ファイルで行い、根尖部以外の根管形成はニッケルチタンファイルで行います。私は大学時代にニッケルチタンファイルの教育は受けていません。新しい治療器材と思われて結構です。

根管治療成功の秘訣

根管の形態に追随した根管形成

湾曲根管の治療の際に、うまく湾曲に追随できた場合の成功率は78.9%。追随できなかった場合の成功率42.9%という論文があります。(J Endod. 2001 Feb 27(2):124-7)ざっくり、言うと、もともとある根管の形に合わせて、根の先から根管の入り口まで、しっかりお掃除すれば、根管治療の成功率は上がるということです。

しかし、これが非常に困難なことなのです。日本の保険診療の根管治療成功率は40%以下というデータからも、根管形態に追随した根管形成は非常に困難であることを物語っています。では、根管形態に追随した根管形成はどのようにすれば可能になるのでしょうか?

それは、

①    手用ファイルとニッケルチタンファイルの併用

②    ニッケルチタンファイルの性能を最大限に引き出し、活用することです。

特に曲がった根管の追随した根管形成は、ニッケルチタンを使用しなければ不可能です。

 

①  手用ファイルとチタンファイルの併用

今までは、根管形成で使用する機材は手用ファイル(ステンレス製)が主流でした。しかし、手用ファイル単独の使用は曲がった根管に使用するとレッジを作ってしまうのです。「♯25以上の手用ファイルは根管の湾曲性に追随できない」というエビデンスも存在します。(Principles  and Practice of End0dontics 3rded .2002 より)レッジとは本来の根管から逸脱し、根管の形に段差ができてしまうことです。根管形成の失敗の状態です。レッジができてしまうと、根管内の洗浄が正確にできない、汚れが詰まってしまう、根管充が不完全になってしまうなど様々な悪いことが起きてしまい、根管治療の成功率を下げてしまいます。ステンレスファイルだけの使用では、根管治療の成功率は下げてしまいます。そこで、ニッケルチタンファイルの登場です。ニッケルチタンファイルは湾曲根管における根管追随性が、手用Kファイルより高いというエビデンスもあります。(J Endod .1995 Apr;21(4):173-6)

ニッケルチタンファイルは非常に弾性があり、しなやかなので曲がっている根管でも追随した根管形成が可能になります。つまり、成功率の高い根管治療ができるのです。当院では、様々なメーカーのニッケルチタンファイルを準備しています。メーカーによって、利点、欠点がありますので、その場その場の状況で使い分けをしています。

 

②  ニッケルチタンファイルの性能を引き出すってどういうこと?

ニッケルチタンファイルをテキトーに使って質の良い根管形成ができるわけではありません。ニッケルチタンファイルの使い方がいまいちだと、さらにレッジを作ってしまいます。

実はニッケルチタンファイルを使用するまでの準備が根管治療の一番難しいところなのです。

ニッケルチタンファイルを使う前に、手用ファイルでの繊細な根尖穿通形成。さらに、言うと、手用ファイルを使うための準備の治療、さらにそのための歯の上部の形成…歯科医の根管治療の腕の見せ所は、ニッケルチタンファイルを使うまでをどう準備するかなのです。これによって、ニッケルチタンファイルの性能を引き出せたり、引き出せなかったりします。先ほども述べましたが、ニッケルチタンファイルの性能を引き出せないとレッジを作ってしまいます。

当院で使用しているニッケルチタンファイル

ニッケルチタンファイルは様々なメーカーから販売されています。どこのメーカーが一番とういうわけでなく、メーカーごとに長所・短所があります私は、様々なメーカーのニッケルチタンファイルを使用しており、根管によって使い分けしています。

当院のニッケルチタンファイルシステム(~2017年まで)

当院のニッケルチタンファイルシステム

私は、主にジッペラー製レシプロックをメインに使用しています。主にストレートの根管に使用しています。湾曲根管にはHyFlexを使用します。しかし、それだけのニッケルチタンファイルではすべての根管は対応できません。実際は様々なニッケルチタンファイルを併用して根管治療を行っています。(↑2017年日本歯科顕微鏡学会発表症例)

ニッケルチタンファイルシステム参考動画

スプリングバック現象

ニッケルチタンファイルのデメリットである現象です。この現象があるためニッケルチタンファイルでも湾曲した根管の形成にエラーが生じます。また、根尖の微小亀裂の原因にもなります。しかし、現在ではスプリングバック現象がないニッケルチタンファイルも発売されています。

スプリングバック現象のないニッケルチタンファイル

湾曲した根尖に力をかけない(スプリングバック現象のない)ニッケルチタンファイルも発売されています。

WaveOneGold、ボルテックスブルー、HyFlex、レシプロックブルーなどが現在発売されており、当院でも湾曲した根管には使用しています。

 

 

埼玉県行田市坂詰歯科医院(熊谷,羽生,鴻巣,桶川,北本,加須,深谷,蓮田,久喜,伊奈町,東松山市,館林,太田,佐野,蕨,川口,さいたま市からも来院)が歯を抜かない根管治療(根の治療、神経の治療)、マイクロスコープを使った保険診療の根管治療(神経の治療)、ラバーダム防湿、長く続く痛み、外科的歯内療法(歯根端切除術)、MTA治療を解説。担当Drは川口市(蕨市より)出身。インプラントの前に治療で歯を残そう。管治療と痛みについて説明します。埼玉県行田市の坂詰歯科医院は根管治療、痛みの管理、マイクロスコープ、ラバーダムについて説明します。

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