水酸化カルシウム療法
水酸化カルシウム療法
肉眼での作業だと、神経を残してしまうことは多々あります。というもの、神経が取れたかの確認ができないからです。私たちは、いままでそれを承知で根管治療(抜髄)を行ってきました。
神経が残ってしまうと治療後に痛みが落ち着きません。そこで我々歯科医師たちは残ってしまう神経にどのような対応をしたのか?それは(一例ですが)、ホルマリンガスによって、歯の内部の生きた細部の神経を殺しミイラ化させて(タンパク質を変性・凝固・沈殿させる)神経の働きを無くさせ、歯の中にとどめておく方法で痛みなどの症状を無くし対応してきました。
~ホルマリン系薬剤の問題~
ホルマリンガスは、FC、FGという薬剤を液体の状態で少量歯の内部に入れ、気発、ホルマリンガスとなります。歯の内部にホルマリンガスを巡らせ、細部の神経をミイラ化させます。(実際は、すべてうまくいくわけではありません)ホルマリンはまた、強力な殺菌作用も示します。
しかし、ホルマリンは毒性が高く、近年では発がん性や突然変異誘発性も指摘されており、世界的に一般的にはホルマリン系薬剤は使用されていません。しかし、日本では、いまだにホルマリン系薬剤は多く使われている現状があります。ホルマリン系薬剤によって、症状の改善は見込めません。
当医院では、マイクロスコープを使った根管治療を行っており、根管内の多くの神経の残骸や感染物質を除去することが可能です。ですので基本的にはホルマリン系薬剤を使用する必要がありません。世界標準である安全性の高い水酸化カルシウム系薬剤(カルビタールなど)を使用します。
使い方は先生によって様々ですが、私は使い分けをしています。
①水酸化カルシウムの短期使用
短期の水酸化カルシウム効果は、殺菌消効果、消炎・治癒効果、細菌内毒素LPSの減少、軟組織溶解補助である。
②水酸化カルシウムの中期長期使用
水酸化カルシウムに直接接触した歯周組織界面での新生硬組織による生物学的閉鎖効果、根管内からの象牙細管を通じての歯周組織に対する間接的知友効果がある。
そういったことを考慮し、当院の症例で解説します。
上段3つの写真は初診時にCT撮影を行った写真です。根の先の根尖病変が上顎洞底を貫通し、上顎洞内に炎症が波及しています。上顎洞内の灰色の部分が炎症の部分です。根管治療後、根管内に水酸化カルシウム製剤の一つである、カルビタールを根管内に充填しました。二か月後に再び、CT撮影を行いました。上顎洞底の中の炎症はなくなり、上顎洞底の骨は再生し根の先の骨も再生しています。これで、わかるのは、水酸化カルシウムは人体に害は少なく適切に使用すれば、人体の組織は再生する、促進させるということがわかります。もし、この治療でホルマリン系薬剤を使用していたら、骨は再生しなかったかもわかりません。